社労士物語

広島県

労務をもっとスマートに、社労士をもっと身近に。オンライン顧問で企業に寄り添う社労士法人

瀬戸内海の中央、広島県の最東部に位置する福山市。鞆の浦や福山城など、豊かな自然や歴史が息づく街です。「ばらのまち」としても有名で、駅からほど近い距離にはバラが見事な中央公園もあります。そして、そのすぐ近くの緑豊かな市街地エリアにあるのが、「あかつき社会保険労務士法人」です。

母や同僚の姿が、女性のキャリアに疑問を持つきっかけに

「正直いうと、最初から社労士になろうと思っていたわけではないんです」とほほ笑む代表の三谷宜雄さん。社労士事務所の開業には、子どもの頃の記憶が影響しているそうです。

三谷さんは3人兄弟の末っ子。母親は専業主婦で、家に帰るといつも笑顔で迎えてくれました。しかし、実は、母親は長男の妊娠を機に、当時の女性としては珍しかった管理職を辞めていたのです。当たり前の日常が、母親がキャリアをあきらめるという決断の上に成立していたことを、三谷さんは後で知ったそうです。小学校低学年の時には、父親が自身の勤めていた会社を引き継ぐ形で自営業者に転身。母親も事業を手伝い、苦労する姿を見て育ったといいます。

やがて大人になり、大手造船メーカーに入社。同期の女性は大変優秀でしたが、出産後に復帰しても最前線には戻れず、日々の子育てに追われ、輝きを失っていく姿を目の当たりにします。短時間勤務や定時退社せざるを得ない状況に、「すみません」と言う言葉に後ろめたさを感じる様子も見受けられました。

「女性が子育てする環境や働き方は、母親の時代と変わっていない。だったら、自分が理想の会社をつくるしかない」。こうして、女性が働きやすい組織を目指し「社会保険労務士事務所あかつき(現あかつき社会保険労務士法人)」が誕生。前職で取得していた社労士資格を生かし、労務管理に関するサービスを提供し始めたのです。

あかつきの“価値”に目を向けるきっかけとなった出来事

現在では全国の顧客に向けて高品質のサービスを提供している同社ですが、こうしたサービスが確立するまでにはさまざまな出来事がありました。

1つ目は、クラウドシステムとの出合いです。創業当初、他社との差別化を図るため、労務業務を一元化できるクラウドシステムを業界でいち早く導入し、電子申請を行うようになりました。また、広島県東部地区で初めて「freee人事労務」の認定アドバイザー資格も取得します。クラウドシステムの活用は、お客様にとっても、社労士サイドにとっても大幅な業務効率化につながることに気づきます。

2つ目は、新型コロナの感染拡大でした。同社では既にクラウドシステムを導入していたため、業務はテレワークへスムーズに移行。オンラインでの労務管理サポートやクラウドシステムの導入、テレワーク時の勤怠管理などの相談が、全国から毎日のように寄せられるようになりましたが、スムーズに対応できました。この経験から、顧客は全国にいるという発見がありました。

3つ目は、会社存続の危機ともいえる出来事でした。コロナ後、売上は右肩上がりでしたが、突然、社内で離職者が続出したのです。「理想の会社を作ろうと、レベルの高い要求をしたり、思いついたら夜中でもチャットでメッセージを送ったり、スタッフ一人ひとりに負荷がかかりすぎていました。特に、子育て中の女性から辞めると言われたときは、頭をバットで殴られたような衝撃でしたね。そういう女性が働きやすい組織を作るために起業したはずなのに…。いつの間にか目標を見失っていたんです」と、三谷さんは当時を振り返ります。働きやすい環境は、実際にそこで働く人の目線で整備しないと意味がないことを痛感したそうです。

あかつきの“価値”を生かしたサービスを検討

こうした出来事を経て、“あかつきの価値”について意識し始めた三谷さん。そしてそれは、「システムを使った業務の効率化によって、きめ細やかなサービスを提供すること」だと気づきます。その価値を最大限生かすため、“やるべきこと”を明確にしていきます。

スマート労務®の誕生

まず検討したのが、提供サービスの見直し。もともと同社では、開業から5、6年間はサービス内容の拡充を目指し、助成金代行やシステム導入支援に加え、採用支援や研修サービス、人事評価制度の導入支援など対応サービスのラインアップを次々と増やしていました。しかし、ラインアップを増やし過ぎれば、一つひとつのサービスに手が行き届かなくなるうえ、スタッフの退職などの理由によりサービスが継続できないなど、属人化の問題も生じるようになりました。そのため、やみくもにサービスを増やすことはやめて、“あかつきの強みが生かせるサービス”を追求しました。

その結果、社労士とクラウドシステムをつなぐ、アウトソーシングサービス「スマート労務®」が誕生しました。「スマート労務®」は、業務効率を高めるクラウドシステムの導入から運用までをサポートし、労務の専門知識を備えた社労士がオンラインで相談に応じるアウトソーシングサービスのパッケージです。

オンラインで全国対応

「スマート労務®」は、システムを活用して労務管理の効率化を図るサービスのため、ある程度の規模、具体的には従業員数50~300人程度の企業に対して、大きなメリットを発揮します。

また、お客様とのコミュニケーションには主にチャットツールを使用するため、事務担当者がいて、デジタル化がある程度進んでいる企業、もしくはこれからDXを推進したいと考えている企業との契約が向いています。オンラインでの対応なので、全国のお客様に対応しているのも強みです。

顧客理解を大切にしながら、デメリットを最小限に抑える

また、社内の仕事のやり方自体も見直します。同社では、かつて顧客担当制をとり、入退社手続きから給与計算、問い合わせ対応まで、一貫して1社を1名で担当していました。この体制は、お客様をより深く理解できるうえ、抜け漏れも最小限で済みますが、離職時のリスクや業務の属人化によりサービスのバラつき、引継ぎなどが難点でした。

そこで2022年後半から、顧客窓口は担当制を維持しつつ、各業務はサポートスタッフによる分業制とするマトリクス構造の組織へ再編します。お客様に対する窓口は、以前の体制と同様に専任ですが、入退社手続きや給与計算をサポートスタッフが担うことで、各工程の専門性が高まります。この体制には、指揮命令系統が複雑になり、各工程の業務量の把握が難しくなるという点はあるものの、「スマート労務®」というパッケージに統一することで、担当者不在や担当者変更の場合でも、均一のサービスを提供できる体制となりました。お客様へのサービス品質維持と継続的な成長支援を行ううえで、デメリットを最小限に抑えています。

チームワークを重視し、個人の責任は排除

採用にも変化が生まれました。かつて顧客担当制で仕事をしていた際は、採用基準として個人の能力を重視していましたが、次第に“報連相”によるチーム内での横のつながりに対して目を向けるようになります。現在では、「相手の立場になって考えることはできるか」「人の役に立てるように適切に努力できるか」「自らの行動が周囲に与える影響を理解できるか」などのチームワークにつながる点を重視しています。

チームワークを乱さないために、組織としても工夫を怠りません。個人の責任を排除し、業務過程の分析を徹底。仕事で何かミスがあっても、個人の責任を追及するのではなく、業務過程に問題があったと考えて見直し、改善していく姿勢です。

非効率でアナログな対応は苦手

やるべきことを明確にしていくことで、同社の強みが明確になる一方、苦手なことも浮き彫りに。

その一つが、いわゆる“丸投げ”の依頼です。社労士事務所に経営者自らが電話をかけ、「今度、新しく一人入社するから、よろしく」「給与の額を決めといて」と依頼するようなケースは、対応が難しいそうです。三谷さんは「システムを使った業務の効率化によってきめ細やかなサービスを受けることがあかつきに依頼する最大のメリット。“丸投げ”で労働集約型のアナログ的な対応は、お互いにメリットがありません。経営者がやるべきことは経営者(または会社側)に、労働法などは社労士事務所で対応する、などの棲み分けは必要」と言います。

あかつきにしかできない仕事を

試行錯誤して取り入れてきたテレワークやクラウドシステムなど、そしてその中から生まれた「スマート労務®」というサービスは、同社にとって最大の強みです。

その強みを生かし、お客様それぞれに合ったクラウドシステムを活用し、シンプルで無駄のない仕組みの構築を実現しています。「お客様からのお問い合わせには24時間以内に回答することを徹底しており、実際にはほとんどの場合、即時に、遅くても2~3時間以内の回答ができています」と三谷さん。オンラインを活用して、距離を感じさせないレスポンスの速さも、お客様が絶賛する魅力になっています。

この社労士の特長

あかつき社会保険労務士法人

三谷 宜雄 (みたに のりお)

広島県福山市出身。「働くことにワクワクする世の中を創る」という想いのもと、一人ひとりが輝ける組織作りを目指し、あかつき社会保険労務士法人を創設。趣味はランニングで、フルマラソンを走破することもある。

広島県福山市野上町一丁目4番10号
https://sr-akatsuki.com

【事務所DATA】
創業年  :2015年
従業員数 :11名
正社員数 :7名
平均年齢 :35歳
男女比率 :2:8

※2024年9月1日現在

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