社労士物語

佐賀県

経営者や働く人と同じチームの一員として、人に寄り添った労務支援を。目指すは何でも相談できる“かかりつけ社労士”

九州の主要都市へのアクセスが便利な佐賀県鳥栖市は、福岡市と久留米市の間に位置し、交通の要衝として広く知られています。市内には九州最大級のアウトレットモール「鳥栖プレミアム・アウトレット」があり、プロサッカーチーム「サガン鳥栖」のホームスタジアムも、街に活気をもたらしています。そのスタジアムやJR鳥栖駅からほど近い、落ち着いた雰囲気のエリアにあるのが「社会保険労務士法人九州人事労務オフィス」です。

商工会議所に務めながら、20代で社労士の資格を取得

自身もサッカー経験者で、サガン鳥栖の熱烈なサポーターだという、代表の野田英紀さん。社労士としてのスタンスについて「顧問先企業と同じベンチで共に戦略を練る、まさにチームの仲間といいますか。企業にとって、そんな心強い存在でありたいと常々思っています」と、サッカーに例えながら語ります。

そんな野田さんが社労士の資格を取得したのは、鳥栖商工会議所に務めていた20代後半のときのこと。経営者からさまざまな相談を受ける中で、社労士の仕事に興味が湧いたことがきっかけでした。

「大学では税法を学んだので、いつかは税理士や会計士になりたいと考えていたのです。商工会議所に就職したのも、確定申告のお手伝いなどで税法の知識が活かせるというのが理由でした。ですが、商工会議所ではそれだけでなく、働き方や人事関連の相談など、人に関する相談がとても多かった。企業が抱えるリアルな問題に直面したことで、労務の知識を身に付けて、経営者や働く人をサポートし、企業がより良くなるお手伝いがしたいと考えるようになりました」。

こうして社労士試験に挑むことにした野田さん。商工会議所で働きながら勉強に励み、見事、社労士資格の試験に合格します。資格を保有し、労務の知識を活かしながら、そのまま安定した商工会議所の仕事を続ける道もありました。しかし、30歳を迎えた野田さんに大きな転機が訪れたのです。それは、先輩社労士からの独立の誘いでした。

独立、そして失敗を経て気づいた、社労士としての理想像

資格取得後、社労士の先輩から、共同経営で事務所を立ち上げようという誘いを受けた野田さん。「30歳で酉年だし、社労士の世界に飛び込むなら今しかない!と思い、商工会議所を辞め起業したのですが…」と、どこか苦い表情で話します。実はこの事務所は、設立から半年ほどで解散となってしまったのです。共同経営者との、社労士として目指すべき方向性の違いが理由でした。

野田さんが理想とする労務支援のカタチは、商工会議所時代の経験から芽生えたものでした。当時、士業と接する機会が多かった野田さんですが、その中には「経営者の要望通りに働き、利益を出すこと」を最優先にする人が少なくありませんでした。その姿勢に対し、野田さんは違和感を抱いたといいます。

「私は経営者が望む利益の実現だけでなく、企業として目指すゴールへのお手伝いがしたいのです。たとえば人事面でも、本来、経営者と働く人は1つのゴールを目指すチームのはずですが、時には対立することもあります。経営者から社員の解雇の相談を受けた時、社労士として解雇の手続きを教えることは簡単ですし、それで経営者の要望に応えたことにはなります。ですが私は、そこに至るまでの経緯をきちんとヒアリングした上で、客観的な立場でいろいろな言葉を投げかけ、経営者に別の気づきや視点を与えたい。企業というチームにどんなトラブルが起きても、あらゆる側面から解決策を一緒に考えられる。企業にとって、そんな存在になりたいと思いました」。

労務といっても、人事や雇用契約、給与計算、社会保険の手続きなど、さまざまな仕事があります。「限られた分野の相談だけでなく、企業が抱えるさまざまな問題と共に向き合いたい。そして、経営者サイドでも働く人サイドでもなく、フラットな立場で企業を支えていきたい」そんな顧問社労士を野田さんは目指し始めます。

2度目の法人設立と、社労士人生における大きな出会い

先輩との共同法人を解散した野田さんは、当時住んでいた自宅アパートを事務所として、2005年に新たな個人事務所「野田社会保険労務士事務所」を設立します。商工会議所時代に構築した地元経営者との人脈があり、顧客企業は順調に増加。企業のニーズに合わせ、労務に関する幅広い業務をサポートするという仕事ぶりを高く評価したお客様からの紹介も増え、業績も伸びていきました。

人間力向上研修と、恩師との出会い

この頃にもう1つ、社労士としても自身の人生にとっても、大きな出会いがありました。当時、介護事業所などへの営業を考えていた野田さん。そんな時、介護・福祉業界を中心に、現場で働く人の人間力強化に着目した「人間力向上研修」を知ります。野田さんは東京で開催された研修に参加。「1日6時間、2日間に渡る研修でしたが、主催していた先生の話には雷が走ったような衝撃を受けました。私が常々想っていた、“人に寄り添った仕事をしたい”という価値観ともぴったり合致すると感じたのです」。

「人財育成は心の育成」という、人間力向上研修の主旨に感銘を受けた野田さんは、鳥栖の介護事務所などを対象に自身でも研修を開催するように。「実は中学・高校時代は学校の先生になりたかったのです。それもあって、この人間力向上研修の内容をもっと多くの人に伝えたいと思いました」。研修を主催していた先生からの依頼もあり、社労士事務所とは別にワールドワイド九州支店を設立。人間力向上研修に加えて、ハラスメント防止やコンプライアンス対応など、研修内容をさらに充実させます。

九州人事労務オフィスの誕生

2015年、社労士事務所としては、後のマイナンバー制度開始を見据えて万全なセキュリティを備える必要があり、自宅兼事務所から離れ、現在の事務所へと移転。その後、鳥栖で長い歴史を誇る老舗の社労士事務所から、野田さんの事務所に加わりたいという申し出があり、合併する形で2017年に「九州人事労務オフィス」が誕生しました。

強固な組織力と、人間味溢れるあたたかな社風

九州人事労務オフィスの最大の強みは、その強固な組織力です。現在、社労士は野田さんと副所長・古賀さんの2名体制で、その他の社員を含めると10名が在籍しています。鳥栖で長く信頼され続けてきた事務所との合併で「老舗」という安心感も加わり、顧問先の企業数は200社超に。これは社労士事務所としてトップクラスの取引先数です。

同社では、労務に関する法律や知識のアップデートのために、社内研修も定期的に実施。基本は月に2回ですが、法改正などがあれば臨時で行うこともあります。研修部会があり、研修内容についても社員が意見を出し合って自発的に企画しています。

人事や働き方などの相談先である社労士事務所で、担当者の変更や退職者が多いと、顧客企業は不安になってしまいますが、その点でも安心できます。というのも、九州人事労務オフィスは社風の良さも魅力の一つで、社員の定着率が高く、最初の開業からこれまでの退職者は2名だけ。

その理由は、社員同士のコミュニケーションを深めるための取り組みなど、働きやすい環境整備に積極的に取り組んでいるからです。例えば「おやつの日」では、社員が交代で“ちょっと贅沢なスイーツ”を購入し、全員で食べるそう。「費用は会社持ち。顧客企業には地元の洋菓子店なども多く、実は地元企業の応援にもなっているんですよ」。社員が顧客企業を訪問する良い機会にもなっています。

細やかで多角的な労務サポートで、人に寄り添う

九州人事労務オフィスの労務支援は、企業のニーズに応じた細やかなサポートが特徴です。顧客企業の相談窓口は担当制で、経営者や総務担当者からいつどんな相談がきても、企業の業務を把握した担当者が対応。「コンシェルジュのようにスムーズかつ丁寧な対応を心掛けています」と野田さんは話します。

また、労働保険事務組合としての業務を行っているのも特徴の一つです。「特に、現場に出ることが多い社長さんたちのお役に立ちたいという思いから、取り組んでいる業務です」。通常、労災保険は一般社員のみが加入対象ですが、組合の会員になることで、企業の社長や代表者も労災保険に加入できるようになります。企業の利益だけでなく、経営者と働く人の健康も支えるこの取り組みは、まさに「人に寄り添う労務」を体現しているといえるでしょう。

企業にとっての“かかりつけ医”として、身近な相談相手になりたい

「労務に関するさまざまな相談はもちろん、時には税務的な問い合わせを受けることもあるんですよ。そんな時にも、まずは分かりやすく説明し、税務署や税理士など、どこへ相談したらよいかまでお伝えしています。『会社のことで困ったら、まずはココに聞こう!』と思っていただける存在になれたら嬉しいですね」と、野田さんは言います。

体調不良で近所のかかりつけ医に行くと、そこから専門医や総合病院に紹介されるように、企業にとって一番身近な相談相手でありたい。そんな理想を形にした「採用・雇用契約・就業規則・手続き・給与計算、人事評価など、労務をまるごとおまかせいただける新サービスを企画しています」。まさに企業のチームメイトとしてその成長をサポートするべく、今日も九州人事労務オフィスが一丸となって業務にあたっています。

この社労士の特長

社会保険労務士法人九州人事労務オフィス

野田 英紀 (のだ ひでき)

佐賀県鳥栖市出身。「人に寄り添い企業を応援する仕事がしたい」という想いから社労士に。共同経営や独立開業を経て、2017年に鳥栖労務管理事務所と合併し、九州人事労務オフィスを設立。サガン鳥栖のサポーターであり、自身も鳥栖高校サッカー部のOB達とフットサルで汗を流す。

佐賀県鳥栖市秋葉町3丁目18番地6 HスクエアBLD3-A号室
https://www.kyujinji.com/

【事務所DATA
創業年  :2017年
従業員数 :10名
正社員数 :8名
平均年齢 :54.9歳
男女比率 :1:9

※2024年11月24日現在

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