鹿児島県
「お客様のために、今すぐ対応したい」そんな想いを胸に、鹿児島市谷山地区で「社会保険労務士事務所Qualia(クオリア)」の代表を務める阿部文枝さん。夜間・休日でもスピーディーな対応が可能で、明るい笑顔で話しやすい人柄が特徴です。お客様に「頼んでよかった」と思われるパートナーを目指し、試行錯誤を重ね、築いてきたQualiaの歩みに迫ります。
「学生時代は『できるだけ楽をして生きたい』と考え、将来に対する明確なビジョンは持っていませんでした」。そう笑顔で話す代表の阿部文枝さん。そこから、将来のビジョンを明確にするまでは、社会人になってからの経験が大きく影響しているそうです。
阿部さんは車好きということもあり、大学卒業後、自動車ディーラーの営業マンとして勤務。当時のディーラーは、来店型の接客ではなく、飛び込み営業がメインだったため、どうすればお客様に話を聞いてもらえるのか日々模索していました。しかし、多くのお客様と接する中で、大切なのは「自分の話を聞いてもらうことではなく、お客様の話を聴くこと」だと気づきます。話を聴くことで信頼を得ることにつながる経験を重ね、次第に「傾聴力」が自身の強みになっていきました。そして、営業成績で1位を獲得するほど、傾聴力に磨きをかけていきます。「初めてお会いするお客様が心を開き、本音を話してくれたときの喜びが、仕事へのやりがいにつながった」。と話します。
一方で、当時の阿部さんは「一つの仕事だけでなく、複数の仕事を経験したい」という想いが芽生えていました。さらなる挑戦を求めて、実際に複数の仕事を経験。しかし、新たな経験を得ること自体が目的となってしまい、一つの分野に腰を据えて取り組む時間が確保できませんでした。その結果、どの仕事においても専門性を深めるには至らず、「器用貧乏のような状態だった」と当時を振り返ります。「このままじゃいけない」そう想った阿部さんは、自らの武器となる資格が必要だと考え、資格取得を意識するようになります。
そんな中、阿部さんの転機となる出来事が起こります。母の年金受給の説明に同席した際、専門用語について、理解が追い付いていない母の姿を目の当たりにしたのです。この時、阿部さんは自身の傾聴力を生かして「難しい言葉ではなく、その人に寄り添って、その人が理解できる言葉で説明したい」と強く感じていました。この出来事を税理士事務所に勤めていた父親に話すと、「社労士という仕事があるよ、女性にも向いていると思う」。と背中を押されます。この言葉が決め手となり、社労士を目指し、そして社労士として活躍するビジョンが立ちました。
それからは、働きながら勉強を続け、結婚・妊娠・出産といったライフイベントを経験しながら、試験に挑み続ける日々。社労士試験は年に一度、難易度は非常に高く、合格率はわずか6~7%。簡単な道のりではなかったものの、あきらめず挑戦を重ね、やっとの思いで合格を果たしました。
社労士資格取得後、阿部さんが勤務したのは地元鹿児島の社労士法人。育児と両立しながらも、「お客様に迷惑をかけたくない」という一心で、がむしゃらに働く日々が始まります。しかし、そこで直面したのは、分業制という組織の壁でした。この社労士法人では、相談対応や書類作成などの業務が部署ごとに細かく分担されており、1社のお客様に対して複数の担当者が関わる体制が取られていました。そのため、迅速な対応が求められる場面でも、自身の手だけでは完結できないもどかしさを感じることがありました。 このように、阿部さんが一貫して感じていたのは「お客様のために、今すぐ対応したい」という強い想いでした。しかし、その想いは、組織の仕組みの中では十分に発揮できず、葛藤が積み重なっていきます。
社労士法人での勤務が7年を迎え、担当企業は100社を超えていた頃、代表からある言葉をかけられます。「阿部さんなら、一人でもやっていけるよ」。当時の阿部さんにとっては思いがけない言葉でした。しかし、「お客様のために、今すぐ対応したい」それが、阿部さんが実現したかった働き方。これを機に、阿部さんは自分のやりたいことを実現させるためにも開業を決意しました。
こうして、2021年、鹿児島市谷山地区の住宅街に「社会保険労務士事務所Qualia(クオリア)」を開業したのです。開業当初、前職の社労士法人から引き継いだ顧問契約は1社のみ。それでも阿部さんはスタッフ1名を雇用し、システムも導入。経営の不安を抱えながらも、「やるしかない」と覚悟を決めてスタートを切ります。ディーラー時代の営業経験を生かし、飛び込み営業や自作のチラシ配布も積極的に行います。「傾聴力」を武器に地道に信頼を積み重ねていく阿部さんのスタイルで、開業社労士としての第一歩を力強く踏み出しました。
営業を始めたばかりの頃は、なかなか契約には結びつかず、開業の厳しさを痛感します。それでも、営業活動を続けていくことで、スポット(単発)契約を含め、徐々にお客様は増えていきました。
ところが、そんな矢先、苦い経験に直面します。スポット契約から顧問契約へ移行したある企業が、契約締結の数日後に契約解除となってしまったのです。その明確な「理由」はお客様から告げられませんでしたが、阿部さんは当初、「顧問契約の説明が十分にできていなかった」と感じていました。ただ、同じ経験を繰り返さないためにも「原因」を追究していきます。「なぜ契約が解除されたのか」を自ら深掘りして考える中で、阿部さんは本質的な原因に気づきます。それは「お客様に対して、顧問契約の説明が十分にできていなかったこと以前に、スポット契約の段階から、お客様に合わせた提案が足りていなかった」ということ。目の前の業務に応じるだけでなく、お客様の立場や将来を見据えた提案が求められていると考えたのです。
以来、阿部さんは「まずは自分が学びを深めなければ」と決意し、士業の勉強会にも足を運び、他の社労士たちとの交流を通して知識や視野を広げていきます。また、Qualiaの体制強化にも着手。阿部さんとスタッフ4名の計5名で朝礼を行い、連絡事項の抜け漏れやタスクの進捗確認を行います。さらに、チームワークを高めるため、社内研修やGood & Newの時間を設け、業務知識の定着とスタッフ同士によるコミュニケーションの活性化を図りました。
こうした学びと仕組みづくりの結果、その後の契約解除はゼロ。お客様からは「丁寧なフォローがありがたい」「本当に頼りになる」といった声が寄せられるようになりました。Qualiaの開業当初に比べて信頼性は格段に向上していったのです。
開業前と開業後の数々の学びを糧に、阿部さんが育んできた強み。それらは、Qualiaのサービスの随所に現れています。その中でも、「レスポンスの早さ」「傾聴力」「継続フォロー」の3つは、阿部さんの働き方を象徴するものになっています。その一つひとつに込められた想いと行動が、阿部さんならではの社労士像を形成しています。
「労務は刺身と一緒、鮮度が命」これは求人情報にも載せているQualiaのキャッチコピーです。このキャッチコピーの根底にあるものは、阿部さんが開業時から掲げている「お客様のために、今すぐ対応したい」という想い。そのため、阿部さんは夜間や休日でもスピーディーな対応が可能です。夜間や土日にも営業されているお客様から連絡があった場合でも、すぐに返信することで、経営者の安心感につながる対応を実現。内容に応じてすぐに電話をかけたり、現場に駆けつけたりと、スピード感も重視した対応を徹底しています。
ディーラー時代の営業経験で培った「傾聴力」も相談時に生かされています。阿部さんは、お客様の言葉にじっくり耳を傾けて本音を引き出し、専門用語ではなく分かりやすい言葉で説明することを大切にしています。この姿勢が、お客様との信頼関係の構築につながっています。実際に、お客様からは「他の社労士には相談しづらかったけど、阿部先生には気軽に相談できた」。と言われる程です。既存の顧問社労士とは別に、相談窓口としてQualiaと契約するケースもあるのです。
「継続フォロー」の姿勢は、過去の苦い経験が生かされています。そのため、労務相談は単発のアドバイスで終わることはありません。「その後どうなりましたか?」と状況確認を欠かさないことも阿部さんの特徴です。相談対応後の職場改善や、制度運用後の課題抽出など、その先のサポートまで徹底。この結果、顧客満足度を高めるだけでなく、周囲の士業からも評価され、紹介案件の増加にもつながっています。
「Qualia」という事務所名は、脳科学に使われる言葉で「感覚」という意味が込められています。例えば、「空が青い」と感じるような、言葉では言い表せないような感覚。阿部さんは、「そんなお客様の感覚に寄り添える事務所にしていきたい」。と話します。お客様のよりリアルな「感覚」に寄り添うためにも、可能な限り早く現地に駆けつけます。対話を重ねることで、本当に求められていることを見極め、最適な解決策を共に考え、実行していきます。「頼んでよかった」と感じてもらえることが、Qualiaの何よりの目標。その言葉を糧に、これからも身近で頼れるパートナーとして、サービスの質を磨き続けていきます。
社会保険労務士事務所Qualia
鹿児島県出身。「お客様のために、今すぐ対応したい」という想いから2021年、社会保険労務士事務所Qualia(クオリア)を開業。「労務は刺身と一緒、鮮度が命」というキャッチコピーを体現するため、企業に寄り添うサービスを追求し続けている。
鹿児島県鹿児島市清和1-26-14
https://www.qualia-sr.com/
【事務所DATA】
創業年 :2021年
従業員数 :5名
正社員数 :0名
平均年齢 :40歳
男女比率 :0:10
※2025年6月9日現在