社労士物語

鹿児島県

環境を整え、花を咲かせる『ガーデナー』のような存在。医療・福祉業界に強い社労士法人

鹿児島市に拠点を置き、南九州エリアで包括的な人事労務サービスを展開する「社会保険労務士法人サフィール」。医療・福祉業界に強く、豊富な専門知識と親身な対応で、組織やその従業員が直面する問題を解決へと導いています。また、自社スタッフの人材育成、セミナーや書籍を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいます。

塾講師の経験から、働く環境の重要性を学んだ

社会保険労務士法人サフィール」で共同代表を務める児玉里美さんは、学生時代、法律や社会制度に関心があったわけではなく、社労士という存在すら知らなかったと話します。もともと人に教えることが好きで、これまで学んだことが役に立てばいいな、という想いで、大学卒業後は地元の学習塾に就職しました。

しかし、児玉さんが直面したのは社会で働くことの厳しさでした。「今と違って、私が就職した頃は、サービス残業が当たり前だったり、女性が産休育休を取りづらかったりする時代でした。働くことについての知識があまりにも足りなかったことを痛感しました」。競争が激しい職場環境だったこともあり、働くことに自信を失ってしまい、3年ほどで退職をすることになったのです。

職場での厳しい経験を通して、児玉さんは社会人としての働き方や労働に関する適切な知識の重要性を痛感します。そして、その整備に携わる社労士という仕事に関心を持つようになりました。そんな折、偶然見つけた社労士事務所の求人募集をきっかけに、新たな一歩を踏み出しました。

新たなキャリアの「選択肢」に気づいたきっかけ

社労士事務所での業務は、社労士や行政書士の補助として、書類作成などサポート的な役割からスタートしました。その後、事務所で中核を担っていた先輩社員が産休に入ることとなり、その業務を引き継ぐことに。それに加え、事務所全体の経理も担当するようになりました。労務から経理まで、多岐にわたる業務を経験する中で会社運営の仕組みを目の当たりにしました。

「会社ってこういう風に回っているんだ、と知ることができて本当に面白かったです。そして漠然と『自分にも経営者になる選択肢があるのかもしれない』と思い始めました」。業務を通じて会社や労働の仕組みを知ったことで、自分のやりがいや理想とする働き方について深く考えるようになったといいます。「どんな風に働きたいか考えた時、私は『好きな仕事を、好きなときに、好きな人と、好きなだけやれる環境で働きたい』と想うようになりました」。

自身について、常に新しいことに挑戦し、自己成長を目指すタイプと語る児玉さん。スキルアップのため在職中に社労士資格を取得します。そして、自分の理想とする働き方や、社労士としての労務支援を実現するため、2015年に独立し「エス労務管理事務所」を開業しました。

主語が「私」から「私たち」に変わった出来事

独立当初、児玉さんは自宅の一室で一人で業務を行っていましたが、お客様の増加に伴い、開業2年目にスタッフを採用。その後、業務拡大に合わせて事務所を移転し、2019年に法人化して社名を「社会保険労務士法人サフィール」に変更しました。しかし、順調に会社を成長させていく中で、経営者として大きな転機となる出来事が起こります。

その一つが、スタッフの同時退職です。当時4人いたスタッフのうち、3人が同時期に退職を申し出てきたのです。家族の都合など個々に事情があったものの、児玉さんは「スタッフの気持ちや状況を十分に理解できていなかった」と反省します。というのも児玉さんは、出張が多く、事務所に不在がちで、スタッフの想いに耳を傾ける余裕を持てていなかったのです。

「独立した頃は、会社の成長が最優先でお客様を獲得することが中心でした。しかし、スタッフを雇うようになって、それぞれが異なる想いや特性を持っていることに気づきました。だからこそ、自分だけでなく、スタッフを育成し、より良い職場環境を作り上げることが大切だと実感しました」。そうして、運営方針を「私が頑張る」のではなく、「私たちで対応する」という視点へと変化させます。主語が「私」から「私たち」に変わった瞬間でした。

さらに、顧問先の規模が大きくなるにつれ、より専門的な相談への対応力が求められていくように。人材育成だけではなく、組織力そのものを上げるためにも社労士のパートナーが必要と考えた児玉さんは、2020年に「ふくどめ社労士事務所」と事業統合します。福留文治さんと共同代表となり、社労士2名を筆頭に、スタッフ全員が会社の「顔」となれるような組織づくりに注力しました。

医療・福祉業界の人事労務を丸投げできるサービスへ

事業統合は、サービスの幅や質にも好影響を与えました。2社の強みが融合した結果、人事労務に関する包括的で専門性の高いサービスを提供できる体制が整いました。

医療・福祉業界に強い

同社の大きな特徴の一つが、医療・福祉業界への労務支援体制です。介護職員の給与改善を目的とした加算制度「処遇改善加算」といった業界独自の制度に精通するほか、人手不足や複雑な業務管理、業界特有の労務トラブルなどにも柔軟に対応できる豊富なノウハウを持っています。

業界に精通した支援を提供できる理由としては、共同代表を務める福留さんが社会福祉法人出身であることや、医療・福祉施設での勤務経験をもつスタッフが在籍していることが挙げられます。さらに、業界的に女性が多い職場なので、共感を重視した親身なアドバイスも好評を得ています。

幅広いサービス領域と、柔軟な対応力

人事労務の対応領域の広さも同社の特徴です。お客様からのあらゆる要望や課題に応える中で「できること」を少しずつ増やしてきました。「私はお客様に『できません』と言いたくない性格なんです。お客様からのご相談に『できない』ではなくて、『どうやったら対応できるか』と考えるようにしています」。この柔軟な対応力がお客様からの信頼につながっています。

社労士とスタッフによる二人三脚のサポート体制

同社では1、2名のスタッフが専任でお客様をフォローする体制を採用。実情やニーズを把握した上できめ細やかな対応を行っています。例えば、ある介護施設への支援では、給与計算や助成金申請、社員の入退社に伴う手続きなどの労務支援は担当スタッフが一括して対応。その過程で必要に応じて、児玉さんが適宜サポートを行うという、万全の体制を整えています。

また、レスポンスの早さも同社の強み。スタッフの木下さんは「お客様は『できるだけ早く答えが知りたい』と思っているはず。そのため、可能な限り迅速に対応することを心掛けています」と話します。こうした姿勢が、お客様の理想の実現を後押ししています。

「お客様と担当スタッフの信頼関係が築かれているため、基本的な対応は安心して任せています。ただし、すべてをスタッフに委ねるのではなく、彼女たちが前面に立ちながら、私は後方からしっかりとバックアップできるよう意識しています」。このように社労士とスタッフが連携することで、スピーディーで手厚いサポートが実現。また、基本的な労務支援をスタッフが担うことで、児玉さんは人事関連のアドバイスや新たな提案に注力しやすくなり、社内の業務体制も効率的に運営されています。

セミナーや書籍を通じた情報発信

サフィールでは、セミナーや書籍などを通じ、労務に関する情報を積極的に発信しています。事務所で独自にセミナーを企画し、社労士だけでなく、職員も講師として登壇します。また、執筆が得意な福留さんが出版や専門誌での連載を担当しています。テーマは採用関係や助成金、ハラスメント問題、労務管理の基礎知識など多岐にわたります。

社内外で「良い畑」を作り、人を大切に育てる

医療・福祉業界に強い同社ですが、引退する社労士の先生から引き継ぎ案件を任されるなど、確かな信頼と組織力も強みの一つです。「地域企業の頼れるパートナーとして、まずはサフィールを魅力ある職場にしていきたい。その結果が、お客様の幸せにもつながると考えています」と児玉さん。経営方針や理念を明確化するため、自社のルールブックを毎年作成し、目標や考えをスタッフに共有。全員が同じ方向を向き、気持ちよく働ける環境づくりを進めています。

「労務や人事の役割は、畑を耕すことに似ている気がします。環境を整え、美しい花を咲かせるのはガーデナーの腕次第。私の理想とする働き方があるように、働く人それぞれが自分のやりたいことや理想とする働き方を実現できるように支えていきたいです」。「人を生かす」豊かな職場づくりを通じて、働く人の安心と企業の成長を見守り、より良い人事労務支援を提供していきます。

この社労士の特長

社会保険労務士法人サフィール

児玉 里美 (こだま さとみ)

鹿児島県鹿児島市出身。「人事労務は感覚ではなく、仕組みで解決する」を念頭に、ミスマッチが起きない採用支援や、定着につながる労務管理のアドバイスを行っている。趣味は、歴史、猫、トレッキング。

鹿児島県鹿児島市下荒田3-42-10 1階 (下荒田オフィス)
鹿児島県鹿児島市真砂町9-11-401 (県庁前オフィス)
https://sr-saphir.or.jp/

【事務所DATA】
創業年  :2013年 ふくどめ社労士事務所(設立年:2019年)
従業員数 :11名
正社員数 :6名
平均年齢 :40歳
男女比率 :1:9

※2025年1月9日現在

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