コラム

【受験者必見】社労士の勉強方法とは?試験合格のポイントを解説

社会保険労務士(社労士)は、企業の労働法や社会保険制度を支える重要な役割を担う資格です。試験の難易度は非常に高く、合格率はわずか6~7%。そのため、効率的な学習方法や計画的なスケジュールを立てることが、合格への大きな鍵となります。 本記事では、社労士試験に必要な勉強時間やポイントを押さえながら、合格に向けた学習方法を徹底解説します。

社労士試験の勉強を始める前に知っておきたいこと

社労士試験の勉強を始めるにあたり、まずは下記について確認しておきましょう。

社労士資格の難易度と合格率

社労士試験を受験する人の属性

社労士資格を目指す動機やメリット

それぞれ詳しく見ていきましょう。

社労士資格の難易度と合格率

社労士試験の合格率は、平均6~7%です。令和6年8月25日(日)に全国19都道府県の会場で実施された第56回試験は、受験申込者数は53,707人で、前年の53,292人と比較して0.8%増加しました。合格者数は2,974人で、前年の2,720人より増加しています。科目免除者が69人含まれ、そのうち公務員特例による免除者は42人でした。最終的な合格率は6.9%で、前年の6.4%からわずかに上昇しました。

このように、社労士試験の難易度は非常に高く、独学では合格が難しいといわれています。社労士試験が独学で挑むのが難しい理由には、出題科目の多さと足切り点の存在が挙げられます。10分野からなる8科目が出題範囲となり、その広さが学習の大きな負担となります。さらに、この8科目それぞれに足切り点が設定されており、どれか1つでも基準に達しなければ合格できません。全科目をまんべんなく学び、苦手科目を作らないことが求められます。

社労士試験を受験する人の属性

年齢別構成では、合格者の中で最も多いのが30歳代で全体の32.5%を占めています。次いで40歳代が28.9%と続き、この2つの年代が過半数を占める結果となっています。一方で、20歳代以下は11.8%、50歳代は19.2%、60歳代以上は7.6%と、若年層や高齢層の割合は比較的少ない傾向にあります。ただし、最年少合格者は20歳、最高齢は81歳であり、幅広い年齢層から挑戦があることがわかります。次に職業別構成では、会社員が59.9%と圧倒的に多く、合格者の半数以上を占めています。次いで無職の方が10.6%、公務員が8.6%と続いており、安定した職業に就いている人々が多いことが見受けられます。

一方、自営業は4.2%、団体職員は4.9%、役員は3.4%、学生は0.7%と、これらの職業からの挑戦者は少数派です。男女別構成では、男性が61.1%、女性が38.9%と、男性の合格者が女性を大きく上回っています。

出典:厚生労働省「第56回社会保険労務士試験の合格者発表」

社労士資格を目指す動機やメリット

社労士資格を取得することで得られる魅力や利点は多岐にわたります。まず、独立開業を目指すことで高収入を得られる可能性があります。令和5年度賃金構造基本統計調査によれば、独立した社労士の年収は約724万円です。正社員の平均年収は変動があるものの約400万円とされているため、社労士の年収は高いと言えるでしょう。

また、独立することで自分の裁量や能力を活かし、会社に縛られず自由な働き方を実現できる点も、多くの人が惹かれるポイントとなっています。

一方で、勤務社労士としてのメリットも大きいです。例えば、社労士を採用したい企業からすれば、社労士契約の有無に関わらず、社内に社労士がいることで、労務業務の負担軽減やコミュニケーションコスト削減、業務フローの改善効果が期待できます。このような背景から、社労士資格を持つことで企業から求められる人材となり、就職や転職においても有利になります。

社労士の勉強パターン

社労士試験に向けた勉強方法は、「独学」「予備校に通う」「動画講座を受講する」などの選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、どれを選ぶかは個々の状況や目的に大きく左右されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

独学

独学で学ぶ場合、自分のペースで進められる点が大きなメリットです。特に仕事や家庭の都合でスケジュールが不規則になりがちな人にとっては、時間や場所を選ばずに学習できるのは魅力的です。

一方で、独学では学習計画を立てる能力やモチベーションの維持が必要となり、特に社労士試験のような広範囲の学習が求められる試験では、自分の弱点を見つけて克服するのが難しい場合もあります。また、試験に関する最新情報や傾向を自力で収集する必要があるため、情報不足によるリスクも伴います。

予備校に通う

予備校に通う場合は、学習計画を立ててもらえることや専門家の指導を受けられる点が大きなメリットです。特にオンライン学習を提供している予備校であれば、通学の手間を省き、効率よく学ぶことができます。

お試し受講なども多く提供されているため、自分に合った予備校を選ぶことも可能です。ただし、予備校に通う場合でも、完璧な選択肢は存在しないことを理解しておくことが大切です。費用面や教材内容、講師との相性など、どこかで妥協が必要になることもあるでしょう。

動画講座を受講する

動画講座を受講する場合、自分のペースで進められる点が大きなメリットです。仕事や家庭のスケジュールに合わせて視聴時間を調整できるため、忙しい社会人や家事・育児との両立を目指す方にも適しています。また、難解な法令や試験の出題傾向についても、実例を交えた解説や図表を使った講義が多く、内容が頭に入りやすいでしょう。加えて、講義を繰り返し視聴できることも、理解を深めるために役立ちます。

社労士試験の参考書・問題集の選び方

独学で社労士試験に挑む場合は、テキスト選びが重要です。社労士試験用のテキストは数多く市販されており、初学者向けのものから試験経験者向けのものまで、さまざまな種類があります。そのため、自分の学習スタイルや知識レベルに合ったテキストを見つけることが成功への第一歩となります。

また、参考書や問題集は1つのシリーズで統一するのがお勧めです。同じシリーズで揃えることで、勉強の進め方や解説のスタイルが一貫しているため、効率的に学習を進めることができます。その他にも、イラストや図解が豊富で分かりやすいものを選ぶこともポイントです。社労士試験の出題範囲には専門用語も多く含まれているため、文字だけの解説では理解が難しい場面もあります。さらに、法改正が頻繁に行われるため、最新の法令に対応したテキストを使用することが必須です。古いテキストを使用すると、内容が現行の試験範囲と一致しない可能性があり、それが原因で無駄な学習時間を費やすことにもなりかねません。

社労士試験の勉強時間

社労士試験に合格するために必要な勉強時間は、一般的に約1000時間といわれています。

たとえば、社会人が平日の仕事と両立しながら勉強する場合、1日に約2時間、土日にそれぞれ5時間程度を勉強に充てると、1週間で約20時間の学習時間を確保できます。このペースで進めると、年間でおよそ1000時間の学習が可能です。ただし、仕事の繁忙期や家庭の事情によっては予定通りに進められないこともあるため、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。

社労士試験に合格するための勉強方法

基本となる科目から取り組む

社労士試験の勉強において、効率的に学習を進めるためには、科目の学習順序を決めておくことが重要です。

まず、すべての科目の基礎となるのが「労働基準法」です。この法律は労働法全体のベースとなっており、他の労働法科目を理解する上で欠かせない知識が詰まっています。そのため、最初に「労働基準法」を学ぶことで、他の科目の学習がスムーズに進むでしょう。続いて、「労災保険法」と「雇用保険法」を学ぶのがお勧めです。この2つは「労働保険徴収法」と密接な関係にあり、「労働保険徴収法」はこれらの徴収手続を定めた法律です。そのため、先に「労災保険法」と「雇用保険法」を学び、それらを理解したうえで「労働保険徴収法」に取り組むと、より深く理解することができます。

一方、社会保険科目では、「健康保険法」から始めるのが効率的です。「健康保険法」は歴史が長く、社会保険制度の中核を成す法律です。そのため、「国民年金法」や「厚生年金保険法」に進む前に、「健康保険法」をしっかりと学ぶことで、社会保険全体の流れがつかみやすくなります。さらに、「国民年金法」は年金制度の1階部分、「厚生年金保険法」は2階部分と例えられるように、「国民年金法」を学んだ後に「厚生年金保険法」を学ぶことで、年金制度全体の構造を明確に把握できます。

頻出問題を反復練習

社労士試験では、毎年出題される内容に一定のパターンがあります。そのため、過去問を解くことで、頻出分野や問題の形式を理解し、どの部分に重点を置いて学習すべきかを把握できます。

ただし、過去問を一度解いただけでは、理解が浅い部分や知識が定着しないことが多いため、同じ問題を何度も解くことで知識を確実なものにする必要があります。反復練習により、知識が深まり、試験本番でも自信を持って解答できるようになるでしょう。さらに、過去問を解く際には、時間を計って本番と同じ環境を意識することも大切です。時間内に問題を解く練習をすることで、試験本番での時間配分やプレッシャーに慣れることができます。

社労士の学習スケジュール例

社労士試験の学習を効率よく進めるために、段階的なスケジュールを組みましょう。以下は独学で挑戦する場合のモデルスケジュールです。

期間

学習内容

ポイント

9月

教材選び、各科目の概要理解、入門書の読了

教材選びを慎重に、全体像を把握して準備を整える

10月

労働基準法、労働安全衛生法の学習

労働基準法を基礎に頻出項目を学ぶ、暗記が中心の労働安全衛生法を文脈で理解

11月

労災保険法、雇用保険法の学習

過去問を繰り返し解く、基本手当の仕組みや細かい数字を記憶

12月

労働保険徴収法、労働に関する一般知識の学習

計算問題に慣れる、労一は基準点確保を目標にする

1月~2月

健康保険法、国民年金法の学習

基本事項を順序立てて学び、問題演習で実践力を高める

2月~3月

厚生年金保険法、社会保険に関する一般常識の学習

年金法の違いを意識、法改正の背景を理解し得点力を向上

4月

年金科目(国民年金法・厚生年金保険法)の復習

理解が難しい年金科目を重点的に復習

5月GW

社会保険科目全体の復習

社会保険科目の全体を再確認し、知識の定着を図る

5月~7月末

総復習、直前対策(横断整理、法改正、模試など)

模擬試験で実践力を強化、知識の8割定着を目指す

8月

弱点の克服、法改正情報の確認、知識の詰め込み

苦手箇所を重点的に復習し、試験に備える

社労士の勉強は計画を立てて効率よく取り組もう

社労士試験は、労働法や社会保険の専門知識を問う非常に難易度の高い資格試験です。本記事で解説したように、効率的な学習計画を立て、基礎から体系的に知識を習得することが重要です。また、過去問や模擬試験を活用して実践力を鍛えながら、苦手分野を克服することで合格に近づきます。

モチベーションを保つことが課題となる場合もあるため、自分に合った学習環境を整えて、計画的に取り組むことが大切です。予備校や動画講座を活用する方法や、独学など、自分に最適な方法を選びましょう。

歴12年・専門記事ライター:加藤 良大

社会保険労務士や弁護士、税理士など士業事務所・法人のオウンドメディアおよびWebサイトの掲載文などを100軒(社)以上担当。その他にも、医療・IT・M&Aなど専門性が求められる記事を合計26,000本以上執筆。

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