コラム

五月病を防ぐために企業がとるべき対策とは?

新年度が始まり、新しい環境や人間関係に適応しようと努力することで、5月に差し掛かると心身の不調を感じる人が増えていきます。いわゆる「五月病」と呼ばれるこの状態は、企業にとっても見過ごせない問題です。特にゴールデンウィーク明けは、従業員のモチベーションや生産性に悪影響を及ぼす可能性が高まります。本記事では、五月病の概要とその影響、そして企業として取り組むべき対策について解説します。

五月病とは?

五月病とは、新年度の環境変化や新たな人間関係、業務への適応に伴うストレスが蓄積し、5月頃に心身の不調として現れる状態を指します。​主な症状には、倦怠感、無気力、集中力の低下、睡眠障害などがあり、放置するとうつ病などの深刻なメンタルヘルス問題に発展する可能性もあります。

企業が抱えるリスク

五月病による従業員の不調は、企業にさまざまな形で悪影響を及ぼします。

生産性の低下:業務効率が落ち、ミスや遅延が増加する。

離職率の上昇:特に新入社員や若手社員の離職リスクが高まる。

職場環境の悪化:コミュニケーション不足や人間関係のトラブルが増える。

法的リスク:メンタルヘルス対策を怠ることで、安全配慮義務違反と見なされる可能性がある。

こうしたリスクは、企業の利益損失の要因として徐々に蓄積されていきます。「五月病は個人の問題」「一時的なものだから自然に回復するだろう」といった認識は、結果的に企業全体へのダメージを大きくしてしまいかねません。

では、企業はどのようにして五月病の対策に向き合えばよいのでしょうか?

五月病の対策

ここでお勧めしたいのが、五月病の対策を専門的に取り組んでいる社労士に依頼することです。

一般的に「社労士」と聞くと、社会保険手続きや給与計算の専門家というイメージが強いかもしれませが、中には従業員の心身の健康管理や、職場環境の改善に特化した社労士もいます。このような分野に強みを持つ社労士であれば、五月病を防ぐために企業がとるべき対策として、一時的なものではなく、職場環境や制度、仕組みまでを見据えた本質的な改善が期待できます。

そのような社労士が企業とどのように関わるのか、4つの具体例を見ていきましょう。

ストレスチェック制度の設計と運用

五月病などのメンタル不調を早期発見するための制度として、ストレスチェック制度があります。これは2015年の労働安全衛生法の改正により導入されましたが、実際に運用まではできていないも企業も少なくありません。

そこで社労士は、ストレスチェック制度を生きた仕組みにする設計と運用を行っていくために、産業医との連携や衛生委員会の立ち上げなど、社内の相談体制の構築支援を行います。

②「気づける上司」を育てる研修

五月病の予防は、現場の上司の対応力も重要なポイントになります。そのため、社労士は管理職向けの研修として「ラインケア研修」や「傾聴スキル研修」などを実施します。

ラインケア研修の「ラインケア」とは、管理職(ライン)が部下のメンタルヘルスに関して果たす役割を指します。研修の具体的な内容は、「部下の変化に“気づく”観察ポイント」や「声をかける場面とフレーズ」、「産業医、人事担当、外部相談窓口などの適切な対応先の案内」を習得することです。

傾聴スキル研修は、単に話を聞くだけでなく、相手が安心して話せる“聴く姿勢”を身につけるための研修です。傾聴の基本「受容・共感・沈黙」や、非言語コミュニケーションの「表情・うなずき」の意識づけに役立ちます。

このように、社労士は、管理職向けに「ラインケア研修」や「傾聴スキル研修」などを実施し、部下の変化を見逃さず適切に対応できる人材育成を行います。

③トラブルを「未然に防ぐ」就業規則の整備

「休職制度が整っておらず対応に困った」「復職の判断基準が曖昧」といった声は少なくありません。社労士は、そうしたトラブルの芽を摘むために、明確で公平なルールづくりを提案します。

具体的には、就業規則に五月病などのメンタル不調に対して、「休職制度が適用される条件、休職期間、延長可否、給与・傷病手当金の扱い」や「いつ・誰が・どの基準で復職を判断するのかといった復職判断のプロセス」を明記しておくことでトラブル回避につなげます。

④第三者だからこそできる中立の立場でのアドバイス

「誰にも相談できない」「言っても変わらない」と思っている従業員が多い職場でも、五月病のリスクは高まります。このような場合、外部の社労士が中立な立場で話を聴くことで、社員の声を吸い上げ、経営陣へのフィードバックが可能になります。社内では気づけなかった改善点が可視化され、五月病のリスクを下げることにも繋がります。

まとめ

五月病は、企業にとって大きな問題であり、早期の対策が求められます。「最近、なんとなく元気がない従業員が多い」「組織の空気が重い気がする」そんな兆しを感じたときこそ、社労士に相談するタイミングかもしれません。「五月病の対策」で挙げた4つの項目が対応可能な社労士を探して相談してみてはいかがでしょうか。

労務の灯台 編集部

ハタラクデザイン合同会社が運営するWebメディア「労務の灯台」編集部。様々な角度から社労士の関連情報をお届けすることで、自社の価値観に合った社労士を見つけてもらいたいと奮闘中。

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